Fresco Capital |Allison Baum氏インタビュー(女性エンパワメント編)

EdTechWomen – Tokyo (ETW) はEdTech領域で働く女性のリーダーシップ支援をするプロフェッショナルネットワークです。

前編:<イノベーション/教育編>に続き、今回はGlobal Education AdvocatorでありFresco Capital でリーダーを務める アリソン バウム氏に、女性エンパワメントの取り組みについてお話しを伺いたいと思います。

 

– アリソンさんが女性のエンパワメントについて携わることになった経緯やどんなことをされているか教えていただいてもいいですか?

女性へ教育することは統計的に国全体にポジティブな貢献をしていくと証明されています。経済成長、社会の非暴力化、気候変動の貢献など様々な面でポジティブな効果が実証されているんです。

といっても、女性は収入面で男性より常に優位ではない境遇にあります。ほとんど今存在する仕事は男性によって男性視点で作られているので、女性にとって成果を対等に評価されるのは難しくなっています。

でも、なぜ人は仕事をするのでしょう?それは生活のためにお金を稼ぐためです。女性もこの本質的な人として持って当然のゴールを追求することは当然だと思いますし、それは男性主体の組織に入るのではなく、女性自身がビジネスを創ることで達成できると考えています。彼女たちが足りないのは、起業のノウハウを学ぶ機会です。

だから私は女性向け起業教育に着目しています。起業するために必要な基本的なスキル、例えば会計、在庫管理、雇用、財務、商品開発などこういったものは実際簡単に学べるものでもあるので、こういった学習コンテンツを提供する団体をメンタリングを通して支援しています。

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コンファレンスにて

 

– 日本の女性エンパワメントについてはどういったことを考えていますか?現代の日本女性にはずばり何が必要でしょうか?

日本では、多くの女性を企業の最前線に取り込もうとウーマニクスの取り組みがありますよね。でも、日本ではサラリーマンの生活はとっても過酷というのはもう常識になっています。一般的にいうと(海外の企業カルチャーと比較しても)日本の企業カルチャーは長時間労働ですし、ストレスフルな環境で柔軟性に欠けています。これが、女性が日本の仕事現場で成功することを難しくしています。

でも私が思うのはなぜ女性は敢えて辛いとわかっている場所に行きたいのでしょう?! もし働く以外の選択肢が専業主婦になることだとしたら、

女性たちに「サラリーマンになろうとするのはやめませんか?あなた自身のビジネスを始めるかスタートアップに入った方が様々な面で良くないですか?」と伝えたいです。

もし私たちが日本の女性たちに起業の道か、もっとグローバルでやりがいのあり柔軟性に富んだスタートアップに入れるようなスキルをサポートすることができたら、ウーマニクスよりも効果的に日本経済全体の成長に貢献できると見ています。

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– 素晴らしい!日本女性に辛いと分かっている20世紀型体質の企業に入りましょうと言うのではなく、女性たちが21世紀型の企業を新しく創ればいい。といっても、特に日本女性は欧米の女性たちと比べて自信や自己肯定感が低いですし、起業に伴うリスクを取ろうというマインドセットも諸国と比べ低いというデータもあります。メンタル面のサポートはどんなことができると思いますか?

まずFearless (怖いものを恐れない)になりましょう。起業家になるのは男女問わず誰にとっても怖いことだし、リスクもあるしわからないことだらけです。でもFearlessになるということは、怖いという感情自体も受け入れること。怖いと感じるのは大丈夫なんです。誰も答えなんてもっていない、だからネガティブな感情も含めて全部受け入れるのです。

もう一つは、そういうネガティブな感情も話し合える相手を探しましょう。完璧な人なんていません、でも互いの未完成さを話し合うことで勇気をもらえますし誰かに相談すること(メンタリング) は実際にスタートアップの世界でも効果があると言われています。互いにサポートし合うことが大事です。

だからアドバイスとしては、分かち合える人がいるコミュニティを探しましょう。そしてもしそういったコミュニティが無かったら、創ってしまえばいいのです。難しくありません。

– 素敵ですね!コミュニティは創ってしまえばいい。勇気をもらえます。

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Stanford大学にて講演

 

– さいごに、サンフランシスコ/シリコンバレーに拠点を移されて、これからどんなことにチャレンジしたいと考えていますか?

シリコンバレーのベンチャーキャピタル界隈は日本と同じで男女差が顕著にあります。Women in VCなどベンチャーキャピタルで働く女性コミュニティはアクティブなのに、男性も含むネットワークイベントに行ったら女性は私一人だけだった、ということがつい最近ありました。

女性たちのマインドの中でもマイノリティという意識があり自分たちを隔離してしまっているのかもしれません。メインのネットワークイベントでも男性と女性が一緒に議論する、つながっていくようなことができるよう、何かできたらと考えてます。

あとは、これまで私がアジアで築いてきたネットワークやノウハウを生かしていきたい。さっき話した通りシリコンバレーの最先端の技術を使った商品の買い手がアジアにいるというアイディアを持っているので、そういった面で私なりの付加価値を出していきたいと考えています。

 

<編集後記>

アリソン氏の熱意、ビジョンの奥深さ、人を大切にする姿にインスピレーションをもらいました。きっと彼女はこれから、サンフランシスコ・シリコンバレーに根深く存在するジェンダーギャップの問題も解決に向け何か起こすに違いない、そう感じさせられました。これからも注目していきたい女性リーダーです。

 

《Profile|Allison Baum アリソン・バウム氏》
アメリカのHarvard大学を卒業。Fresco Capitalの以前はGoldman Sachsを経てNew York発のグローバルの革新的高等教育スタートアップ General Assemblyの初期メンバーとして香港で事業立ち上げに携わる。グローバルシェイパーズ・コミュニティーのメンバーであり、Wedu Globalで東南アジアの女性起業家のメンターなどを務める。2015年にはthe Forbes Asiaの30歳以下でもっとも有望なファイナンスとベンチャーキャピタルのメンバーの30人のうちの1人に選出された。

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Fresco Capital |Allison Baum氏インタビュー(イノベーション/教育編)

EdTechWomen – Tokyo (ETW) はEdTech領域で働く女性のリーダーシップ支援をするプロフェッショナルネットワークです。

EdTechとは、テクノロジーの力で教育の様々な問題を解決する事業全般を指していますが、EdTechを含め、世界中の様々な分野の問題をテクノロジーで解決する事業の支援にフォーカスする団体があります。

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Fresco Capital Homepageより

世界中の起業家をサポートするアーリーステージのベンチャーキャピタル、Fresco Capitalです。投資分野は教育から働き方改革からヘルスケア(医療)に渡り、「テクノロジーでグローバルの問題解決をするビジネス」を考えている起業家のミッションを非常に重視しています。

そこで今回は、Fresco Capitalの共同創業者、マネージングパートナーとしてこれまで三年間日本を拠点に活動され、”Global Education Adovocate (グローバル教育の提唱者)” であり、女性のエンパワーメントにも情熱をお持ちのAllison Baum(アリソン・バウム)氏にインタビューしました。

 

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日本にいた頃のアリソン氏

彼女が見る世界のイノベーティブな事業やEdtech、日本のEdtechや教育問題、女性のエンパワーメントについて、ちょうど先月東京から米国サンフランシスコに拠点を移されたばかりというタイミングでお話しを伺いました。イノベーション/教育編と女性エンパワメント編と二回に分けてご紹介します。

 

– これまで三年間東京で過ごされ、アメリカに戻ってきた今、どんな風に感じていますか?

正直に言うととっても不思議な感じです。東京に住む前は香港にも三年住んでいたから、私のキャリアのほとんどはアジアで過ごしたことになるんです。だからサンフランシスコに来てアメリカ人だというのに、アメリカ式の仕事のカルチャーに慣れるのに今必死です。

人脈やネットワークもこれから創っていくという感じです。ただ、若い時にアジアに居たことで自分がやりたいことに集中できて、内面的に成長できたと思います。アメリカにいたらきっと外からの期待やプレッシャーを感じていただろうと思ってます。

 

– 今サンフランシスコを拠点とされているアリソンさんのFresco Capitalでの役割は日本に居た時から変わりましたか?

私たちはグローバルのマーケットを対象にしているので、やりとりする会社の業種は少し変わると思いますが、基本的に私の役割は拠点を移しても同じです。

私の役割は主に大きく三つあって、まず、テクノロジーでグローバルの問題解決をしているユニークな起業家や会社を探すこと。そして彼らと一緒に仕事をしないかとアプローチします。二つ目は、会社が投資支援をすることになった後のサポートもやります。例えばどうやってセールス部門を立ち上げるか、人を雇うかとか学校や顧客と付き合うか、海外にビジネスを展開するか、などサポートします。三つ目は、私たちの支援対象は大企業も多いので、彼らの内部事業のデジタル化の支援、今後5〜10年に市場を創り出すテクノロジーについて、投資機会についてのアドバイスなど行っています。

 

– 投資先の起業家さんや大企業と寄り添って事業の成長をサポートされているんですね。例えば、アリソンさんがこの会社に事業支援をしたい、と決める時の基準はありますか?起業家さんのどんなところを重視しますか?

多くの起業家は、プロダクト自体の”Product Market Fit (商品がどう市場にフィットするか) ” について語ろうとしますが、私たちは”Founder Market Fit (起業家自身がどう市場にフィットするか)”について重視しています。例えばEdTechの事業だったら、起業家自身が教育事業に携わっていた経験があったかどうか、その市場の常識について常に問いかける姿勢を持っているかどうかが事業の成功に向け重要になってくると思っています。

– 日本を拠点に活動する起業家たちについて、どのような点がグローバルの市場の中で強みになってくるのでしょう?

日本は課題先進国という意味で世界の中でとてもユニークな市場です。高齢化、仕事の自動化、経済成長の停滞、都市化問題などは今後次世代に渡り世界の他の国も経験していくことですが、どれも日本が最初に経験します。スタートアップ企業にとって、成功するために最も大事な要素は、”マーケットタイミング” (どのタイミングで導入するか)です。

最先端のテクノロジーを開発するスタートアップ企業は、シリコンバレー、ニューヨーク、ロンドン、中国などに今は集中していますが、彼らはビジネスモデルを考えるのに苦労しています。なぜなら、そこに住む人々はまだそういった先進的な商品にお金を払いたいと思うレベルまで来ていないからです。私たちは、日本はニーズが既にあり、最先端の技術を使ったソリューションにお金を払う意思があり条件が揃っている市場だと考え、チャンスがあると見ています。

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– 外国企業にとって課題先進国の日本市場は直近の顧客候補として魅力的なのですね。一方、日本内部では電子マネーなどデジタル化がアメリカや中国と比べ出遅れていたり、特に教育面では学校のデジタル設備がまだ整っておらずEdTechの浸透が他国と比べ出遅れています。どのような点が日本が教育イノベーションを推進していく上で課題だと思いますか?

EdTech事業に取り組む際に一番もどかしい面は、常に教育は他の領域のシステムと切り離せないところです。アメリカの教育で最大の課題は、高いドロップアウト率、低いテストのスコアと不平等なリソースの配分(教育格差)です。日本をはじめとしたアジアの国は既にこういった問題は解決できていると思います。日本のドロップアウト率はほぼゼロだし教育資源は効率的に分配され、テストスコアも世界の中で最も高い国の一つです。

とはいっても、私が日本で日本人のEdTech起業家たちに会う時、彼らはよく「アメリカの教育を目指して日本の教育を変革していきたい。」と話していました。隣の芝生は青く見える、ではないですけれども、日本独自のこれまで文化、政治、経済的な要素が複雑に絡んで教育システムが創られてきたことについてまず理解をすることが大事なのではと思います。

また、これは日本だけでなく他の国でも共通することかもしれませんが、日本の教育者は、生徒に新しいことにトライし既存のシステムを飛び越え、失敗を恐れない姿勢を教える必要があると思います。このような”イノベーティブな考え方”が教育界の各ステークホルダー間で浸透していないことが日本のEdTech普及での問題なのではないでしょうか。例えば多様性の欠如と集団との調和を追求する文化です。人それぞれ学び方は違うのにも関わらず、システムに合わせることを学習者に求めてしまっています。でも、それ自身、今の日本の教育にある”考え方”も、これまで日本の文化的、社会的側面から出来てきた根強いもの。この相反する矛盾が変革を難しくしていると考えます。

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この難解な問題に対して、唯一の解決策として、多様な考え方、学び方、教え方に触れていくことが肝となるのではと思います。例えば他国の教育システムに触れる機会を創ることです。私は”Global Education Advocate”、グローバルでEdTechを推進する立場にいる者として、教育者たちに、”自国のユニークな強みを生かし、他国のベストプラクティスを借りていきませんか”と伝えていく責任があると感じています。Frescoでも世界中の教育者たちが他国の教育事例に触れられ交流できるような機会を創れないかと今模索してます。

 

– 20世紀型教育から脱却し21世紀型教育を創る過渡期にいる日米の教育者は自信がなく他国の事例が良く見えてしまうのですね。逆にいま、グローバル共通のEdTechの問題をどう見ていますか?

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先ほど言ったように日本だけでなくPersonalized Learning (学びの個別化)は様々な国もチャレンジしているのではないでしょうか。主に三つの点で。

一つは、質の高い教材の開発をしていくこと。学習者全員に同じ内容を提供するのではなく、それぞれの学習者が自分にあった最適な学び方で効果的に学べるような、”Learning how to learn” にフォーカスした教材が必要です。学習者の強みを生かすことができ眠っていた才能を開花する手助けができるのではないでしょうか。

二つ目は、査定方法を整え成果を証明していくこと。これはまだ新しい分野であるからこそ難しい点ですが、個別化学習をした上で、テストの点数とは違った形でどう成果を評価していくか。

三つ目は、学校や先生たちがこれまでの教育システムから新しい学びに対して上手く順応するサポートをしていくこと。テストの点数ではない査定方法で、生徒一人一人の成果を見ていくことについて、従来の査定方法ではないので、先生だけでなく、保護者も戸惑うのではないでしょうか。

Frescoとしてもこういったサポートを考慮にいれたAdaptive Learningを提供している事業を支援していきたいと考えています。
(次編:女性エンパワメント編に続く)

 

《Profile|Allison Baum アリソン・バウム氏》
アメリカのHarvard大学を卒業。Fresco Capitalの以前はGoldman Sachsを経てNew York発のグローバルの革新的高等教育スタートアップ General Assemblyの初期メンバーとして香港で事業立ち上げに携わる。グローバルシェイパーズ・コミュニティーのメンバーであり、Wedu Globalで東南アジアの女性起業家のメンターなどを務める。2015年にはthe Forbes Asiaの30歳以下でもっとも有望なファイナンスとベンチャーキャピタルのメンバーの30人のうちの1人に選出された。